『研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし』 豊田佐吉 ― “わくわく・ドキドキ”を感じて 新事業創造や業務改革・改善に喜びと誇りを持ちましょう ―

 私が社会人の第一歩を踏み出した四十数年前の通信業界の最大の課題は三千万台を超える電話設置ニーズを満たすことであり、コンピュータ制御型の交換機開発に向けられていった時代でした。ディジタル化技術の進展は日本の通信網の全電子化を成し遂げ、飛躍的に通信品質は改善され、金融・公共・製造業へとコンピュータ導入が広がるにつれパケット交換技術などによってオンライン化が実現されました。
 ここで特筆すべきは、技術進化のサイクルが2~4年という実にゆっくりとしたものでした。大量の人員と開発費によって開発された製品は数百キロもある大きな筐体に実装され、しかも大変高価なものでした。

 いまや、通信・ネットワークは幾多の技術の盛衰を経て、インタネット全盛の時代を迎え、さらに昨今ではクラウド、モバイル、タブレットが主役の新時代に突入しています。開発も利用も主役はすでに若い皆さんの手に移っています。“わくわく・ドキドキ”を感じて、新しい商品やサービスを創造する気概を持って頑張って戴きたいのです。
 技術進化はまさに日進月歩であり、我々年配者の時代感覚では間尺に合わず 口を挟む余地は少なくなっています。若い皆さんの柔らかい発想力と行動力で時代を牽引して欲しいものです。

 技術革新や他社との熾烈な競合の中で開発に明け暮れた時代の苦しい中にも先端技術開発に取り組み、他社に先駆けて製品を出荷できた時の喜び、重要製品の開発を任されたときのドキドキ感と大きなやりがいを感じて仕事に没頭しました。その様な感覚を今の若い技術者の皆さんと分かち合い、バトンタッチするのが私の使命だと思っています。

 IT技術の進化はニーズの多様化・細分化を促し、大量生産から多種少量生産型へと変化をもたらしています。新しい商品やサービスを提供するに際しては、従来のように巨大な生産設備や大規模な開発投資は必ずしも必要とすることなく、クラウド環境などを活用することで新しいサービスを提供することが可能になっています。
 重厚長大の産業が幅を利かせていた時代には製品開発は大企業にしかできなかった訳ですが、軽薄短小の時代には我々中小企業にも大いにチャンスが訪れてきた訳です。すなわちアイディアとスピードを持ち合わせたものが勝者となりうるのです。自社サービスが大ヒットを生む可能性が出てきたのです。
 しかし、勝機を手にするためには掲題の『研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし』の豊田佐吉の精神が重要です。母親が来る日もくる日も夜なべ仕事で糸紡ぎをする様を見て、その労苦を開放したいと改善に工夫を重ね、世界最高峰の自動織機を開発し、特許権を売却した資金が自動車開発の資金に充てられました。トヨタの礎を築いた偉大なる発明家の言葉だけに重みがあります。

 これまで当グループも新事業創造に様々なチャレンジをして参りました。一番大きなチャレンジは「いきいきメディケアサポート」の設立と開発投資ですが、利用者数も徐々に増加してきており、もう少しで黒字化できるところまできました。営業活動と機能追加開発を行うことで社会的ニーズに応えると同時にグループ全体の利益拡大に貢献することが可能です。併せてヘルスケア・医療分野のITシステム開発技術が蓄積できたことは大きな財産です。

 海外事業も当グループの大きな成長戦略の一つです。2013年度を海外事業元年と位置付け、ミャンマーでの市場性調査を終え、事業計画の策定に入っています。今後、経営企画本部を中心に具体化して参ります。これまでとは別の場面での活躍が可能です。

 このように当グループは基幹事業を中核として、新事業創造や業務改革・改善に積極果敢に取り組み、限りない成長・発展を遂げる会社としてのDNAを育んで欲しいと願っています。
 その原動力は、“わくわく・ドキドキ感”であり、『研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし』という精神だと思います。グループの全社員の皆さんに賛同願えたら幸いです。

2013年9月