『大つごもり』に思うこと ― 目的と手段を混同してはいないか? 本末転倒になってはいないか? 我々の発想と行動は?! ―

 『大つごもり』とは大晦日のことであり、樋口一葉の短編小説『大つごもり』を連想される方も多いでしょう。樋口一葉って誰?とおっしゃる方はご自分の財布を覗いてみて下さい! 樋口一葉さんに時々出会うことができます。  その樋口一葉の『大つごもり』のあらすじは次のとおりです。“主人公のお峯は両親を幼い時に亡くし、下町で八百屋を営む伯父夫婦に育てられた。しかし伯父は病の床に付き、店をたたみ、みすぼらしい六畳一間の裏屋住まい。火鉢の他は道具らしきものもなく、米びつさえもない。  そんな生活をお峯は女中奉公で懸命に支えるのであるが、伯父はこれ以上お峯に苦労を掛けまいと高利貸しから十円を借りて当座のつじつま合わせをした。ところが年の瀬も迫り大晦日には一円五十銭の利息だけでも払わなければならないし、また正月の餅代もないことをお峯に話し、奉公先から二円ばかり用立ててもらえぬものかと頼む。
 奉公先のおかみさんはあいまいな返事ながらも借金を承諾してくれていたものと思っていたお峯、ところが大晦日の当日になってものらりくらり。師走の北風がひゅうひゅう吹き込む北口のお勝手で、手をすり合わせてお願いするものの不機嫌になるばかり。 ああ、どうしてもあのお金。恨めしきはおかみさん・・・ 家人が誰もいなくなったとき、引出しから一円札を二枚抜き取ってしまったのである(今の価値で約五万円)。
 大晦日には大勘定(年度末決算)が行われ、引出しのお金も持ってくるよう言い付けられたお峯は、絶体絶命の思いで引出しを開ける。「無い!」 札束ごとなくなっているではありませんか。戻ってきた奉公先のドラ息子がお金をせびった後、引出しの札束を持ち去ったことが分かりました。お峯には何の疑いもかからなかった“、ということです。

 26日、安倍政権が発足しました。『強い経済を回復』というキャッチフレーズは良いけれど、物価上昇率目標2%を日銀責任で達成させることを掲げ、さらには雇用回復も日銀の責任範囲とまで言い出すと政治は一体何をするの?と疑問が湧いてきます。また、必要な公共投資もありますが、一般的に公共投資というのは持続的な経済成長をもたらさない、借金だけが残る愚策なのです。国債を発行して一時的な経済刺激策だったら誰でもできるのです。
 本来、政府が経済成長を促す政策を掲げて実行するのが第一義であり本質であって、その結果 企業業績が向上し、賃金・雇用率が上昇し、その結果 物価が上昇するという順番なのです。  昨今の議論は本末転倒、物価上昇が目的のような議論になり、政治が本質的に取り組まなければいけないことが二の次になり、人のせいになりかねない危うさが感じられます。
 今、国家財政は破綻目前の状況にある訳でこれ以上借金を増やさずに、『強い経済』を回復させる知恵が求められているのです。規制改革や成長分野創生を促す施策によって企業が新事業を興し、新規投資をするようすることが政治に課された最大の使命です。また我々企業人は、ニーズを掘り起こし、消費者が本当に必要とするような商品やサービスを開発し、提供する義務があると思います。長期デフレというのは間違いで、正しい認識は需給ギャップが発生しているために企業業績が低迷しているということであり、我々企業人も政治の無策のせいにするのではなく、消費者が望む新事業、新商品・新サービスを積極的に開発しなければなりません。

 今や財政赤字はいかんともしがたいほどに膨れ上がり、一歩間違うと国債発行金利は高騰、円が大暴落に繋がる危険をはらんでいます。政府はいたずらに借金を増やして国民を経済危機におとしめてはならず、インフレターゲットを勇ましく叫ぶ人はまず、『インフレというのは国民の富を政治が強制的に奪う(国民の預金・保険・債権などの資産がインフレ分だけ減る、年金生活者などは生活苦に陥る)ことになる悪政』であるということを理解した上で舵取りをしてもらわなければなりません。目的と手段が混同し、本末転倒になっているようで危なくてしようがありません。 
 国家財政の上に『大つごもり』はひたひたと迫っており、お峯のように罪を誰かがかぶったり、神のご加護がある訳はありません。本末転倒でなく、目的と手段をしっかりとわきまえ、節度ある政治が行わなければなりません。

 我々働楽グループも経営および事業推進に当たっては本末転倒でなく、目的と手段をしっかりとわきまえて、ミスの少ない判断をしていかなければならないことを肝に銘じる必要があります。そして、常にお客様や社会が求める新しい商品・サービスを開発し、ご提供することが使命であることもしっかりと認識して参りましょう。
 働楽グループの『大つごもり』は何の心配なく過ごせますし、将来に亘っても心配ありませんので、ご安心下さい。
 社員の皆様とご家族の『大つごもり』は新しい年の飛躍につながる風物詩であると信じて!皆様、良いお年を!!

2012年12月