社長の思い

人生に成功する秘訣は自分が好む仕事をするのではなく、 自分のやっている仕事を好きになることである (ゲーテ)

 先日(2月23日)の日経新聞夕刊18面「こころの玉手箱」(連載記事)欄で日立製作所の川村会長が次のように語っておられます。
 “電機メーカの技術者は地味な仕事だ。納品した発電機などが故障や不具合を起せば、夜中に機械を止めてもらい、その中に潜り込んで原因を突き止めるために何時間も費やす。お客さんには怒られ、判明するまで50回も100回も出張することもある。
 辛くて惨めな気持ちになるが、若い時にコツコツとこうした地味な仕事を積み重ねた者の中で、ある瞬間に何かをつかみ、その後は飛躍的に良い仕事をするようになる者が出る。「能力の覚醒」とでも言うべき現象。社内で数多くそんな例を見てきた。”

 昔々 物理を教わったある教授曰く、“君達、下積み生活は長ければ長いほどいいんだよ!”と話されたとき、下積みの苦労や大変さが身に沁みて分かっていた私にとっては、“どうして?もう程ほどにしたい!”という思いが頭を強くよぎったのを鮮明に覚えています。しかし意に反して実際は何年も何年も私の下積み生活は続きました。 10年、20年と開発屋として沢山の下積み仕事でも逃げずにやっていると、そのうち“あいつは頑張り屋だ!それなりに出来そうだ!!”とある程度評価を戴けるようになり、仕事への取組み姿勢や考え方、着眼点や方法論などが磨かれ確立できてきたように思います。納期の問題、故障や不具合などでお客様から怒られ、上司・幹部から叱責を受け、それらをバネに如何にして良い仕事をするか、レベルの高い成果を出すか、一流といわれる技術者になるためには何が足りないか、を問い続けるうちにやがて問題プロジェクトを預けられようとも重要プロジェクトを任されようとも必ず成功に導いて見せるぞ!という高揚感と自信が湧いてくるようになってきました。
 日経新聞に寄稿された日立製作所 川村会長のバックグラウンドとなっているご経験や実績はレベルや質の点で格段に高く、引合いに出すのは恐れ多いのですが、私自身も自分の経験からくる思いや感慨も全く同じものがあります。
 物理を教えて戴いた今は亡き教授の“下積み生活は長いほど良い”と言われた言葉が、今になってしみじみその通りだったなー!と感じています。長い下積み生活の中で多種多様の業務を、自分流で解決策を探り、工夫し無我夢中でこなした経験が今に活きていると思っています。 (余談ですが、今の時代では信じられないくらいの残業・徹夜・休日出勤の連続で、多少の病気もしましたが、それらを耐えぬいてきたことも忍耐力・精神力を養ってくれたかな(笑))
 我々凡人は、与えられた仕事を一つ一つコツコツと、しかも意味を考えながら、そして工夫・改善を加えながら「心を込めて」仕事をすることが上達の一番早道のように思います。
 世の中誰一人としてパーフェクトな人間はいません。自分を鍛え、成長させる一番良い方法は、仕事を一生懸命することです。(冨山和彦氏 経営共創基盤代表取締役)
 「心を込めて」仕事をすると、前頭葉が圧倒的に活性化され、神経ネットワークを沢山活動させることになり、パフォーマンスが早くなる。「心を込めること」がスキルアップさせていく最も手近でかつ最強のコツである。(篠原諏訪東京理科大教授)

 タイトルに掲げたゲーテの言葉『人生に成功する秘訣は自分が好む仕事をするのではなく、自分のやっている仕事を好きになることである』は、最近大学の講演の冒頭で引用している言葉です。これから社会に出る若い人達に一番受け止めて欲しいと思う言葉であると同時に、自分自身に対してもいつも謙虚で、現実から逃げずに心を込めて一生懸命に職責を全うする戒めの言葉と思っています。
 皆さんの業務においても厳しいこと、辛いこと、行き詰ること、などなど上げればきりがないくらいにあると思います。同時にいくつもの難題が襲い掛かってくることもあると思いますが、逃げずに果敢にやり遂げることにより、多くの術(すべ)を身に付けて、一歩一歩逞しく成長して下さい。昔の人は言いました「習うより、慣れろ!」。色々なことを愚直に体で覚え、自分のやっている仕事を好きになって、人生の成功を勝ち取りましょう。

2011年2月